近江商人と叁方よし

近江商人
近江商人(近江商人博物馆提供)

头に菅笠、縞の道中合羽をはおり、肩には前后に振り分けた荷を下げた天秤棒。江戸时代から明治にかけて活跃した近江商人の典型的な行商スタイルである。
近江商人とは、近江国(现在の滋贺県)に本宅(本店、本家)を置き、他国へ行商して歩いた商人の総称で、大坂商人、伊势商人と并ぶ日本叁大商人のひとつ。「近江の千両天秤」ともいうように、天秤棒1本から财を筑き、叁都(江戸、大坂、京都)をはじめとする全国各地に进出し、豪商と呼ばれるまでに発展していった。
伊藤忠商事の创业者?初代伊藤忠兵卫もその一人。麻布の持ち下りが商いのスタートだった。関西から関东をはじめとする全国各地へ行商することを「持ち下り」といい、反対に地方の产物を関西へ运び売ることを「登せ荷」といった。近江商人は自分の足で歩いて各地の需要や地域による価格差などの情报を仕入れ、全国的规模の商品流通を行った。こうした商いは、やがて日本経済が発展していく上で大きな役割を担っていった。
近江商人の経営哲学のひとつとして「叁方よし」が広く知られている。「商売において売り手と买い手が満足するのは当然のこと、社会に贡献できてこそよい商売といえる」という考え方だ。滋贺大学宇佐美名誉教授によれば、「『売り手によし、买い手によし、世间によし』を示す『叁方よし』という表现は、近江商人の経営理念を表现するために后世に作られたものであるが、そのルーツは初代伊藤忠兵卫が近江商人の先达に対する尊敬の思いを込めて発した『商売は菩萨の业(行)、商売道の尊さは、売り买い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの』という言叶にあると考えられる。」とのことである。自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを愿う「叁方よし」の精神は、现代の颁厂搁につながるものとして、伊藤忠をはじめ、多くの公司の経営理念の根干となっている。